イエスタデイ回顧録

想う

これは先週の土曜日の話
山梨に向かう電車の中で、僕はこれから向かう場所の事に想いを馳せていた





1997、8年頃の僕達がライブをすると言えば決まってあの場所だった。




甲府のかすがもーるというアーケードにある雑居ビルの中に
「イエスタデイ」という小さなライブハウスがある。
土日の昼頃は大抵、高校生バンドのライブに当てられるので、
その時間帯はいつも若者で賑わっていた。



バンドを始めて間もない頃はそこに出るのが目標だった。
初めてそこでライブができることになったのはバンド始めて8ヶ月目のことで、
「目標達成だ!!」と喜び、
「この調子で来年は文化ホールの大ホールで、その次は東京ドームだ!!」
という突拍子もない事を言って大騒ぎしていた。
(ちなみに、小ホールではあったが、そこまでは一応実現した)







そして時は流れ、2004年・・・


今回のイベントの為に会場予約をするべく「イエスタデイ」に連絡を入れた。
昔、何度も通ううちに店の人達とも顔なじみになったし、
過去にイベントを企画させてもらったこともある。
今回も快く引き受けてくれるだろう、と。



しかし、電話が繋がらない。
番号自体が存在しているが、回線を止めていると言った状況のようだ。
ホームページを見ても、アクセスできないようになっている。
何かしらの情報がないかとネットで検索してみても、何もない。
これはどうしたことか?



11月14日、僕はイエスタデイに足を運んだ。
会場は他の場所にしてしまったし、もう用事はないのだが、
実際に今どうなっているかこの目で確かめておきたかったのだ。





なんか、明らかに看板が他の店舗のポスターで隠されている・・・
出足をくじかれたような気分になった。
(しかもエステ・・・)
重い足取りでエレベーターに乗る。




一応エレベータの階数案内には名前が残っている。
エステは3階だった)
わずかな希望が残されていたのには安堵したが・・・





扉が開くと、いつもなら看板や張り紙が飛び込んでくるのだが、
無機質に「5」と書かれている以外、何もない。
そして・・・




店の入り口の場所は、厚い扉で閉ざされていた・・・
店の気配はおろか、人の気配すらない。




それ以上、そこには何もなかった。
僕はビルを後にした・・・



何かお知らせの張り紙とかがあったわけでもないし、
明確な証拠があったわけでもないが、
土曜の15時という一番にぎやかなはずの時間帯に
誰も居なかったと言う事実は確かだった。



少なくても去年の秋まではちゃんと営業しているのは確認している。
今年になって甲府に行く回数が減ったこともあるが、
何の予兆もなしにイエスタデイは消えてしまった。



ただ僕としては(未確定だが)閉店してしまったという事よりも、
何の情報も残されていないことの方が心に寂しさを植え付けられた。









時は流れて、世界は少しずつ変わって行く。
前に前にと進んで行かなければ行かない日々の中で、
これからも僕らはあの場所を時々思い出すのだろう。