「ンクク」と笑うあの娘

今日の三冊

西島大介ディエンビエンフー
IKKI版と、掲載誌休刊のために未完で終わってしまった角川版の両方を揃えました。
個人的には絵の感じは角川版の方が好きで、漫画としてはIKKI版の方が好きかな。



さて。
なんとも評し辛い漫画だ。
ディエンビエンフー」というタイトルの通り、この漫画の舞台はベトナムで、
1965年から1973年という期間の中でベトナム戦争を描いている。


しかし、史実的な内容がほとんどなく、
ベトナム戦争を舞台にしている必要性があまり感じられなかった。
むしろ戦争をポップな絵で描いてしまっているので(それがこの作品の見所ではあるけれども)、
ベトナム戦争を題材にするには作品のスタンスが軽すぎるように思える。
おまけページなどではベトナムの文化を紹介したりベトナム戦争の年表や解説をしているので、
その点はよかったのだけど、それが本編にあまり反映されてない。


ディエンビエンフー」というタイトルとベトナム人美少女「姫」のビジュアルがバッチリキマってるだけに、
それ以外の部分が名前に負けてしまっているのが残念だ。



ただ、全くつまらないわけではない。
絵柄の可愛らしさや登場人物のキャラクターは好きだし、
作者の熱意は強く感じるので、先に述べた点が気にならなければ充分読み応えある。



爆発に巻き込まれて繋いだまま手と手がちぎれて吹き飛ばされて地面に落ちるという、
衝撃的であまりにも切ない「ラストシーン」が冒頭で描かれる。
(明確な描写はないが、カメラマンの主人公が手にしているのと同じカメラも同時に吹き飛ばされている。)
ここからどんな物語が繰り広げられるのか興味を持った人は、手に取ってみるのも悪くないと思う。