僕はこれを7年待った

染み入る音

大木綾乃ニューアルバム、「呼び水」。
なんと意外な事に初のピアノ弾き語りオンリーである。



そう、彼女はずっとピアノの弾き語りで活動していた人だった。
僕もそれが好きだったのに、
メジャーから出されたファーストは全編ものすごい安っぽいアレンジが施されていて、
とてもがっくりしたという同時に、メジャーでCDを出すということの厳しさを知った。


それでもそれを補って余るほど歌と曲が抜群によいので名盤であることは間違いないが、
それでも大木さんから「ピアノ」という重要な要因を取り除いてしまったこのアルバムは、
エリック・クラプトンがギターを弾かずに歌だけ歌っているアルバムを聞かせれてるような物足りなさがあった。
布袋寅泰がギターを弾かずに歌だけ歌っているアルバム、と置き換えるのも可)



その後のリリースもアレンジ自体は改善されていったが弾き語りの曲というのはあまり収録されないでいた。
メジャーを離れてインディーになってから初めてピアノが全面に出るようになり、
そしてついに「歌とピアノだけ」という本来の彼女の真骨頂であるスタイルでのCDが出たのである。



当然それだけでも悪くなる筈がないのだけど、
実際聴いてみて、「名盤誕生だ・・・」と心から思える作品だった。
カヴァー曲、過去の作品(デビュー曲「眠る魚」)のピアノヴァージョンなども秀逸だけど、
新曲2曲がメジャー時代と衰えを微塵も感じさせないくらいの「綾乃節」が炸裂していて、
あらためて彼女の力量に感服した。




間違いなく、10年後、20年後も追いかけたいアーティストだ。
マイペースな彼女なら、ずっと変わらずに続けられるだろう。